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橋沢育郎、17歳。 彼は半年前まで、ただの高校生だった。 だがあの日、家族旅行で交通事故にあったあの日から彼の人生は一変した。 秘密結社ドレス 彼の体に何らかの処置を施し、恐ろしい力を与えた存在。 生物兵器、サイボーグ、超能力者…それまで現実に存在しているとは思いもよらなかった存在が、 ドレスの命で彼に襲い掛かってきた。 たった数日の事である。 故に彼はある程度非常識な事に耐性があった、しかし 「つまり…ここは地球じゃなく、魔法使いが住んでいる国という事か…」 非常識にも程がある そう思わずにはいられない育郎であった。 「それ、本当なの?あんたが異世界から来たって」 目の前のピンク色の髪をした少女が胡散臭げに口を開く。 彼女の名前はルイズ、魔法を使える一族、すなわちこの世界の支配者階級である貴族であり、 育郎を『召喚』して、この世界に連れてきたと言っている少女である。 「信じろって言っても難しいだろうね、僕だってあの月がなければまだ半信半疑だったと思う」 窓の外に浮かぶ、2つの月を(今夜何度目なるだろう?)見て答える。 召喚された後、目の前の少女と会話をしてわかったことは、ここが剣と魔法…もとい、魔法が支配する ファンタジーな世界であり、自分はこの少女の『使い魔』として『召喚』されたという事。 彼女曰く、使い魔とはッ! ひとつ、素敵なり! ふたつ、決して主人の命に逆らわず! みっつ、決して主人のそばを離れない! よっつ、あらゆる敵から主人を守り、しかも敵の能力を上回る! そしてその姿は主人(ルイズ)のように美しさを基本形とする。 「そんな使い魔を求めてたってのに、なんであんたみたいな平民が出てくるのよ!」 「そんな事を言われても…」 「しかも異世界って何よ、異世界って!ファンタジーやメルヘンじゃないんだから!」 「僕から見れば、この世界がファンタジーやメルヘンなんだけど… ひょっとして他に、鏡の中の世界なんてのもあるのかもね」 「あるわけないでしょ!」 あるよ とにかく育郎の方でも、自分がこの世界の住人ではなく、魔法が存在しない…とこの数日の経験から 言い切れなくなったが、その話をするとややこしくなるので、とにかく魔法が存在しない世界から来たと伝えた。 しかし自分同様、異世界から来たという話をほいほい信じるわけもなく、今もこうやって、彼女は疑惑の視線を 自分に向けているというというわけだ。 「それで…『使い魔』だっけ?僕を元の場所に戻す魔法はなんてのは」 「ないわよ!というか戻せる者ならとっとと戻して、とっくに新しい使い魔呼んでるわ!」 この少女、先程からとにかく怒鳴りまくっている。 (でも、しかたないか…) 一方的に呼び出されて怒鳴られながらも、育郎はそう考えた。 なにせ話を聞いてみると、『使い魔』の『召喚』はとても神聖なもので、呼びされる使い魔が、その魔法使いの人生を 決めると言っても過言ではないとまで言われているらしいのだ。 「どうして?何で?よりによってこのアタシの使い魔が平民なのよ!」 「ごめんね」 「へ?」 予想外の言葉に、今日一日全開だった怒りゲージがゼロになる。 「えーと、今なんて?」 「すまない…どうやら君に迷惑をかけてしまったようだ」 これはどういうことだろう? 混乱する頭でルイズは考える。 自分が怒鳴っている事は、はっきり言ってただの八つ当たりである。理不尽極まりない。 この平民が反抗しようものならムチを一振り 口で(そんなはしたない事言えないわ!)をたれる前と後ろにサーをつけろ! 等といってネチネチいびり倒し、ストレスを解消するつもりだったのに。 しかし今、目の前の平民の口から出た言葉は何? ごめんなさい ひょっとして謝っている? いや、待て、素数を数えて落ち着くのよルイズ…ゼロ、ゼロ、ゼロ 誰がゼロよ!ていうか素数じゃないし! それはともかく 相手は平民、つまり貴族たる私には絶対服従。 何もおかしい事はない、おかしい事はないのだが… (なんか、何時もと違うような…) 平民が貴族に謝る時はかならず脅えなり、反抗なりの感情が見えるはずだ。 しかし目の前の平民は、脅えも反抗もなく、ただ自分の非を認めて(そんなものないのだが)謝っている。 「どうかしたのかい?」 「え?ああ、うん…つ、使い魔としての心構えは良いようね、寛大な心で許してあげるわ」 無理やりそう思い、思考を目の前の現実に戻す。 「それで…どうしてもその…君の使い魔にならなきゃ駄目かい?」 「…当たり前よ」 使い魔の召喚はやり直しは聞かないのである、使い魔が死ねば新たな使い魔を償還できるようになるが、 さすがにそんなことをやる気にはならない。 「そうか…」 育郎は、自分のことを考えてみた。 自分の父と母は交通事故で(正確には違うのだが)死んでいる。 他に家族は居ないが、友人達は自分を心配しているかもしれない。 そして彼がなによりも気がかりなのは、ドレスから一緒に逃げ出したスミレという少女の事である。 目の前の少女より一回り小さく、歳も…確かまだ9歳のはずだ。 予知能力を持っていたせいでドレスに捕まり、ひょんなことから捕らわれた自分を解放してくれたのである。 最後のあの時、彼女はあの爆発から逃げ出せたのだろうか? 無事だとしたら自分のことをさぞ心配しているだろう… そして、彼は決心して口を開いた。 「わかった、君の使い魔になろう…けど、できればだけど、僕を元の世界に返す手段を探してくれないか?」 「…できればね、わたしだって平民の使い魔なんてごめんだもの。」 で、あんたが出来そうな事って…」 「え、なんだい?」 「主の目となり耳となり…駄目ね、なにも見えない。後は…」 一人でブツブツと続けるルイズ。 「だから何が」 「アンタが使い魔として出来る事よ!無理だと思うけど、一応聞いてみるわよ。秘薬を見つける事って」 「秘薬?」 「やっぱり無理ね…となると後は一番重要なことなんだけど…主人を守る事。でもアンタじゃ無理ね。 犬ぐらいには勝てそうだけど、幻獣はもちろん、並みのモンスターにだって勝てそうにないもの」 「………」 自分の身体に宿る力を使えば、おそらく彼女の言う幻獣やモンスターを倒す事などたやすいだろう。 そして多分魔法使いにも…自分が闘った巨漢の超能力者ぐらいの力がなければ相手になりはしない。 「…そうだね」 だが、あえてその事を言うつもりはなかった。 自分の中に眠る力を使えば、スミレのように、この少女に迷惑をかけてしまうかもしれない。 ここが魔法の世界でも、住んでいるのは人間なのだ、ドレスのような組織が自分を狙ってこないとは言い切れない。 「だから、あんたに出来そうな事をやらせてあげる。洗濯、掃除、その他雑用」 「わかった。得意とは言えないけど、頑張ってみるよ」 「うむ、素直でよろしい。じゃあ眠くなったからあたしは寝るわね。ほい、あんたの毛布」 ボロボロの毛布を投げてよこす。 「ありがとう」 「あ、そうそう、あと…」 もぞもぞと自分の服を脱いでいく。 「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」 顔色一つ変えずに、ルイズが無造作投げてよこした服や下着をまとめて適当なところに置く育郎。 「うん、それじゃあおやすみ」 「はいはい、おやすみ」 ルイズはベッドに、育郎は床の上で毛布にくるまる。 こうして、橋沢育郎の記念すべき使い魔生活第一日目は終わりを迎えたのであった。 ちなみに 彼が目の前でルイズが服を脱ぐ事に何も反応しなかったのは…ルイズが知れば怒り狂っただろう… 彼女を小学校高学年ぐらいだと思い込んでいたためである。 「洗濯もしないお嫁さんなんて最低よね」 一方そのころ、育郎が心配していた少女スミレは誰言うことなく、そんな言葉をつぶやいていた。
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注意!!この話はMM逃走中 もう1つのゼロワン編の後日談であり、他者の二次創作ダンガンロンパアナザー2のネタバレが含まれております! カキコだと多数の目に留まるのでwikiに載せることにしました。 全てが終わったゼロワン世界。 だが、解決してない問題がまだ1つ‥‥‥‥ これは1人のどこにでもいる乙女が成長した、その代償の物語。 エピソード episode1 成長と変化の末に episode2 掴み取った幸福 episode3 壊れたマリオネット episode4 hunting Wolf episode5 狂喜と恐怖はすぐ側に episode6 悪魔が殺意を抱いた時 episode7 途切れないココロ episode8 夢ウサギVS呪グモ episode9 やっぱりあたしは絶対負けない仮面ライダー Final episode ゼロからワンへ あとがき
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あれから貴族達は蜘蛛の子を散らすように才人から逃げていった。 あの、ゼロと呼ばれて切れかかっていたルイズや、心配をして見に来たシエスタすら、才人の5m以内に近寄ろうとしない。 至極当然だ。僕だって近寄りたくない。 才人が近づけば、近づいた分だけ後ずさり。 近づく。 後ろに下がる。 近づく。 後ろに下がる。 駆け寄ってくる。 全力で後ろに下がる。 「おい……、ちょっと待っ……」 「イヤァアアアアアアアアアアア! こっちに来ないでくださいィィィィイイイ!」 「許可しないィィィィィィイイイイイイイ! 使い魔が、私のそばに近づくことを許可しないィィィィィイイイイイ!」 「僕のそばに近寄るなァァァァァッ!」 「こいつはクセェー! ゲロの臭いがプンプンするぜぇーーーーッ! こんな平民には出会った事が無いほどなァ!」 才人は泣きそうになっていた。 僕はさんざんボロクソにいわれて、凹みきった才人を、何とか水場まで連れてくる。 はじめはシエスタが水場までの案内を勤めることになったのだが、上っ面は取り繕っていたものの、今にも泣き出しそうな様子だったので、僕が代わりに才人を水場まで連れて行くことになったのだった。 女性は大切に扱わなくてはならないからな。 「へっ……。どうせ俺はモグラさ……」 「良いから、早く身体を洗ってください」 しかし、今にもキノコが生えてきそうな、この才人はどうにかならないのか。 彼は調子に乗るのも、落ち込むのも早い。しかもどちらも天井知らずだ。 マッハで落ち込み、マッハで立ち直る。 きっと空気の速度を超えてるから、とことん空気が読めないのだろう。 僕はそう、自分の中で結論づけることにした。 身体は洗えるが、パーカーの方はどうしようもないので、洗濯して干すことになった。 勿論、洗濯は才人にやらせる。 替えの洋服なんて持っているわけが無く、上半身裸で、ひたすらに服を洗う姿は、何とも哀れみを誘った。 でも手伝わない。 ともかく、このままではルイズの元に戻ることも出来ないので、僕が学ランを貸してやる必要がある。 「もう、大丈夫だよな……?」 しきりに自分の臭いを嗅ぐ才人。 これを見ていると、どうも貸そうという気が起こらなくなる。 しかし、おいていくわけにも行かないだろう。 「気になるんだったら、コレを使ってください」 僕はズボンのポケットに入れていた、消臭スプレーを才人に手渡した。 秋葉原を歩くのに、常備していた奴だ。 正直、コレ無しで彼処は歩きたくない。 「ああ、サンキュー」 そういってスプレーを受け取り、才人は念入りに身体に吹き付け始める。 そういえば、この世界ではスプレーの換えはきかないんだな。 やむ得ないとはいえ、簡単に才人にスプレーを貸したことに、僕は少し後悔した。 彼がそこの所を、配慮してくれればいいのだが…… 「おし、もう大丈夫」 かけ終わったのか、才人は僕にスプレーを返してくる。 残量を確かめるため、軽く振ってみる。 チャポチャポと音がした。 結構使われてしまった様だ。 まだ新品だったのだが。 才人の方を向く。 フローラルな香りが鼻についた。 僕は思いっきりため息をつきながら、才人に来ていた学ランを渡した。 才人は受け取った学ランを見つめ、ぽつりとつぶやく。 「なあ、花京院」 「何です?」 「何で、秋葉原行くのに学ラン来てたんだ?」 「僕は学生ですから。ガクセーはガクセーらしくですよ」 「いや、理由になってないから」 やや身長に差があるためか、僕の学ランは才人には一回り大きかった。 僕にとっては膝下ぐらいまでだが、才人にとっては脛ぐらいまである。 学ランが汚れないか、少しそわそわしながら、僕等はルイズの部屋の方へと戻る。 途中、ルイズの部屋へと向かう螺旋階段を上りながら、才人が何かを思い出したように話しかけてきた。 「そういやさ、聞きそびれたことがあんだけど」 「何ですか?」 僕はどうせまた、空気の読めない事を言うつもりだろうと、聞き流すつもりでいた。 「あの決闘の時、お前から出てきた緑色のアレ、いったい何なんだ?」 「!」 「アレが前言ってた、スタンドって奴か?」 唐突だった。 今、彼はなんと言った? 僕のスタンドが見えた。といったのか? その一言を聞いて、今までの、スタンドが発現してからの思い出が、すっと僕の頭の中に浮かび上がっていく。 「お、おい。花京院? お、俺、今何か不味いこと言ったのか!?」 僕に気持ちが通い合う人が何人現れるだろうか。 小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号で一杯だ。 母には、父がいる。父には、母がいる。 TVに出ている人や、ロックスターにはきっと何万人も居るんだろう。 自分は違う。 自分にとって、真に心の通い合う友人は現れるのだろうか? 実を言うと、ここが異世界と解った時、ほんのちょっぴり期待をした。 記憶の僕のように、ここなら、ひょっとすれば、僕と真に心が通じ合う友人が出来るかも知れない。っと。 今、目の前の才人は、ずっと僕の目の前にあった、一つの柵を、何も無いかのように越えてきたのだ。 心に、ささやかな期待が生まれた。 何故見えたのか、そんな疑問は、その期待の前では些細なものだ。 「いえ…… 後で、詳しく教えます……」 「そ、そうか……」 ルイズの部屋の前に着く。 僕の心は、いささか弾んでいた。 あの時、ルイズが殺気を放っていたことすら忘れるほどに。 僕らは、部屋のドアを開けた。 鬼がいた。 「随分と、機嫌良さそうじゃない。ご主人様にあれだけふざけたまねをしておいて……」 鬼……この部屋の主、ルイズは右腕に乗馬用の鞭を持って、どっかりとベットの上に座っていた。 正直言って、僕らは目の前の少女にびびっていた。 足がすくんで、体中の毛が逆立ち、全身が凍り付いた。 胃が痙攣し、胃液が逆流してくる。 反吐をはく、一歩手前だ。 「勿論、覚悟は出来ているわよねぇ……」 底冷えがするような声だった。 「「HOLY SHIT! ヤッバアアアイイ!」」 「待ちなさぁ~い!」 結局、あれだけゼロゼロと連呼したことで、僕と才人は3日間の飯抜きを宣告されたのだった。 チャンチャン♪ To be contenued…… 戻る
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無駄に豪勢でどことなくハリポタちっくなトリステイン魔法学院の食堂。 卓上に並ぶ朝っぱらから重そうな食事に、見るだけで胸やけしそうになる中年のアヴドゥル。 (ワインまで置いてあるぞ) まさに、至れり尽くせりの光景はアヴドゥルを呆れさせる。 「おい、見てみろよ『ゼロ』のルイズの使い魔」 「ちょっwマジで平民じゃんw」 遠巻きに聞こえる陰口の影響からか、機嫌の下降したルイズは睨みながらアヴドゥルに言う。 「気が利かないわね。イスを引いてちょうだい」 アヴドゥルは黙ってルイズのイスを引いてやり、自分も座ろうとイスに手を掛けるが、 「待ちなさい。あんたの場所はそこ」 冷たい言葉と共に、貧相なパンとスープの置いてある床を指差すルイズ。 昨日今日で、だいたいルイズのことを理解してきたアヴドゥルは大人しく従う。 ブリミルへの長い『いただきます』を終え『ささやかな』食事を始める貴族達。 あっさりと食事を終えたアヴドゥルは、好奇の視線に耐えながらルイズが終えるのを待つ。 (さすがにアレだけでは足らんな…、後で厨房にでも顔を出すか) アヴドゥルがシエスタの言葉を思い出し、そんなことを考えていると、ルイズが食い物の載った皿を突きつけて来た。 「……なんだ?」 意味が分からず問うアヴドゥルに、そっぽ向きながら……、 「べべべ、別にあんたに優しくしようってわけじゃないのよ。洗濯もきちんとしたみたいだし、そのご褒美なんだから!」 少し赤くなった顔でツンるルイズ。 今までが今までなので一瞬止まるが感謝の言葉を返すアヴドゥル。 「すまない。アレでは足りなかったのでな、助かる」 「……ふんッ、調子に乗らないの。でも…そうね、次からもう少し多めにするよう言っておくわ」 従順な姿に気を良くしたのか『食い物握って躾け大作戦』を修正するルイズ。 皿には大きめの鶏肉に野菜などが置かれていた。 さっそく食べ始めると、自然に言葉が零れる。 「……上手いな」 料理自体の上手さに加え、不器用なルイズの優しさが零させた感想だった。 教室に移動し今度は自分からルイズのイスを引いてやり、邪魔にならない壁際の床に座るアヴドゥル。 授業が始まるにはまだ時間があるようなので、周りに居る他の使い魔でも眺め、 (イギーがいたら喜こんだかもな) どこか、周りの動物を馬鹿にしていた賢かった犬の戦友のことを思い出していると、フレイムが寄って来た。 「きゅる」 「ああ」 挨拶交わしていると、他の使い魔もアヴドゥルに寄って来る。 前の世界にもいた猫や犬といった動物、本の世界でしか見たことの無い幻獣。 多種多様の生物だが、フレイムと仲がいいのが関係したのかみな好意的だった。 「おい、見てみろよルイズの使い魔」 「他の使い魔に囲まれてるな。しかも……」 「ああ。まるで違和感が無いな」 「もしかしてあいつ、平民じゃなくて変種の魔物なんじゃねw」 そんなことを囁かれているとは露知らず、アヴドゥルは他の使い魔たちと交流を深めていく。 授業が始まり、魔法に興味のあったアヴドゥルは熱心に聞く。 幸運にも基礎のおさらいから始まり、 魔法には火、水、風、土の4系統がある。 失われし系統『虚無』 メイジの強さの基準である魔法を足せる数、ドット、ライン、トライアングル、スクウェア。 etc 幾つかの情報を手に入れるアヴドゥル。 だが、おさらいが終わり専門的になってくると、アヴドゥルには理解できなく関心が薄れていく。 (どうやら魔法と言うのもスタンドと同じく、生命エネルギーのようだな……ん?) 得られた情報より推論を出していると、シュヴルーズが錬金で石を真鍮に変え、アヴドゥルは思わず目を見張る。 一方、ルイズはというと………。 授業開始前のアヴドゥルへの陰口は、机を叩き威嚇+睨みつけで止めさせた。 しかし、授業が始まり再開した陰口を止める術はなく、苛苛し勉強に集中できないでいた。 「聞いているんですか?ミス・ヴァリエール」 「…へッ!?」 いつの間に名前を呼ばれていたのか、ルイズはとっさに返事できず、 「仕方ありませんね。授業を聞いていなかった罰です。ミス・ヴァリエール、前で錬金しなさい」 みんなの前で、錬金をさせられることになった。 「先生!危険です!」 「そうです、『ゼロ』のルイズに魔法使わせるなんて」 「止めてください」 いきなり騒がしくなる教室。 耳ざとく『ゼロ』の言葉を察知したルイズは、言ったピザに言い返す。 「先生!かぜっぴきのマリコルヌに侮辱されました!」 それを聞いたピザ(マリコルヌ)と罵り合いになる。 醜い争いはシュヴルーズがピザの口に栓をし、ルイズを教壇に来させることで決着した。 ルイズの錬金が決定したことにより大慌てで机の下に隠れる他の生徒。 シュヴルーズはどうやらルイズの噂を知らないのかのほほんと構えている。 しかし、そんなことも目に入らないほどルイズは集中していた。 (大丈夫よ。落ち着くのよルイズ。ゆっくり素数を数え……) 素数から勇気を貰い、ゆっくりと石へ杖を向ける。 (サモン・サーヴァントが出来たんだからきっと出来るはず) そこでちらりとアヴドゥルに視線を向けると……視線が合った。 ここで失敗し、無様な姿は見せられない。 大きな覚悟を持ち、唱えた錬金の魔法は………やはり爆発した。 ドーーーーーーッン! 「へ?」 至近距離で爆発を受け、吹っ飛ぶシュヴルーズはそのまま壁に当たり気絶する。 また、突然の爆発に驚き暴れだす使い魔たち………アヴドゥルを巻き込んで。 「なッ!?」 爆発にも驚いたが、問題はそれだけでない! 首を蛇に締められ、犬には噛み付かれ、猫には引っかかれる。 止めにフレイムがアヴドゥル目掛け炎を吐いてくる。 間一髪、伏せアフロだけは免れたが、 「ぐぼあッ!?」 炎は不幸にもピザな少年に直撃していた。 なんとか爆発から身を守った生徒は騒ぎ出す。 「あいつ、辞めさせろ!」 「なんでいつも爆発なんだよ!」 「マリコルヌ気をしっかり持て!」 「なんてこった!マリコルヌの髪がアフロに!」 そんな、阿鼻叫喚の光景の中、ルイズは呟く。 「ちょっと失敗したようね」 悪びれる様子もないルイズをさらに罵倒する生徒。 むざむざ黙って言われるだけじゃないルイズが言い返し、収拾がつかなくなる。 結局授業は中断することになり、ルイズに後始末が命じられとりあえず一件落着となった。 蛇に締め落とされかかっているアヴドゥルを放置して。
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ゼロ 《出典作:ザ・キング・オブ・ファイターズ2000、ザ・キング・オブ・ファイターズ2002UNLIMITED MATCH》 VS. 対アンディ・ボガード【餓狼伝説シリーズ:SNK】 「オレの拳は疾風!!その迅さにいまだかつて誰も拳の影すら見た者は居らぬ」 ※投稿・管理人 対イグニス【KOFシリーズ:SNK】 「だめだっ、まだ死ぬなぁぁっ!とどめはこのゼロが刺すーっ!」 ※投稿・codegreen 対グラント【餓狼MOW:SNK】 「我が疾風の拳、寸分の狂いも無く貴様の心の臓を突き破ってくれるわ!!」 ※投稿・管理人 対クリザリッド【KOFシリーズ:SNK】 「このゼロのバトルスーツは完璧だ!戦闘データの学習など必要ないのだ!」 ※投稿・codegreen 対元【ストシリーズ:CAPCOM】 「見事な気配の消し方だ。このオレに読ませぬとはただ者では無い。貴様の拳は暗殺拳か!」 ※投稿・管理人 対豪鬼【ストシリーズ:CAPCOM】 「久しぶりに退屈から開放されたわ!!せめて敬意を表して天の下で眠らせてやるわ!!」 ※投稿・管理人 対コーディー【ストシリーズ:CAPCOM】 「野心は無いのか?だったら生きていても仕方あるまい」 ※投稿・管理人 対コブラ【パチスロコブラ:SNK】 「ブラックソード・ゼロ?何者だそいつは?」 ※投稿・ハッテン♂野郎 対コブラ【パチスロコブラ:SNK】 「私がこの世の頂点に立つためにも、貴様のような存在は生かしてはおけぬのだ」 ※投稿・codegreen 対ジャック・ザ・リッパー【ワーヒーシリーズ:SNK(ADK)】 「このオレにスキあらばいつノドを描き切っても良いのだぞ」 ※投稿・管理人 対シュラ・ナイ・カノム・トム【ワーヒーシリーズ:SNK(ADK)】 「…こうして何人の修羅を屠ってきたか……百人から先はおぼえていない!!」 ※投稿・管理人 対神人・豪鬼【カプエス2:CAPCOM】 「嬉しくて肌が粟立つわ!!この世に命のやり取りほど面白いゲームは無い!!」 ※投稿・管理人 対ゼロ(オリジナル)【KOFシリーズ:SNK】 「せめてもの情けだ。苦しまぬよう一気にその頭ごと踏み潰してやる」 ※投稿・codegreen 対春麗【ストシリーズ:CAPCOM】 「負けたとは言え興味深い女よ!貴様のような強い目をした女は初めて見たわ!!」 ※投稿・管理人 対ハイデルン【KOFシリーズ:SNK】 「やはりお前でもオレを楽しませてはくれぬらしい」 ※投稿・管理人 対無界【KOF2003:SNK】 「全てが無から始まる時、時代を握るのは暴力!そして拳の力!!」 ※投稿・管理人 対雪【月華の剣士シリーズ:SNK】 「雪が貴様の血を誘っておるわ!!」 ※投稿・管理人 対萬三九六【サムスピシリーズ:SNK】 「フ…ボロを装ってオレに近付くとは考えたな」 ※投稿・管理人 対リュウ【ストシリーズ:CAPCOM】 「フ…愚かなる男よ。体得する拳を誤ったな」 ※投稿・管理人 &. &コブラ【パチスロコブラ:SNK】 「怒部隊も、そしてネスツさえも…我が真実の姿は見透かせぬ!」 『大した演技だ、ハンフリー・ボガードに見せてやりたかったね』 ※投稿・codegreen
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「……な……なによあの……船は……」 「オレが知るか」 大きさとしてはレキシントンより一、二回り大きい程度だが、ハルケギニアの船のように側舷砲を持たず船首に長大な砲を構えた鉄の船がそこにあった。 「まぁ、見た感じこっちのモンじゃあねぇ事は確かだろうぜ」 「……あれ、あんたの世界の船なの?」 「オレんとこの船は飛びはしねーよ……だが……形はそうだな」 船がどうあれグレイトフル・デッドの射程内に納まる大きさだ。 そう思い、ゼロ戦を船に近づけようとした時、船から何かが連続で飛んでくるのを察知した。 普通なら、スタープラチナ並みの精密さでも無ければ見えない速さだったが、印効果で何かが飛んでくる事には反応できる。 だが、操縦者は反応できても機体はそうはいかない。アムロの反応速度にガンダムが追いつけなくなったアレと同じだ。 数発が機体をかすめ、回避先に一発操縦席目掛け飛んできている。 「……チッ!」 回避不能、狭い操縦席内では避ける事もできないし、元よりベルトで固定している。 回避ができないと判断するやグレイトフル・デッドを全面に展開させ腕でガードする。 衝撃はあるだろうがモロに食らうよりはマシだ。 風防に穴が空き、それを受けるが、グレイトフル・デッドの腕に綺麗な穴が開いた。 「うぐぁ!……バカなッ!」 「え……なんで腕から血が!?」 スタンドに穴が開いたという事は当然、本体にもダメージがフィードバックされ服こそ破れてはいないが腕から血が吹き出た。 それを見たルイズが右往左往……狭いからできないのであたふたとテンパっている。 スタンドにダメージを与えられるという事から導き出される答えは一つ。 「スタンド攻撃かッ!!」 ミスタのピストルズを思い出したが、弾が誘導される気配は無かったし、なによりピストルズの射程ではない。 (船からの攻撃……遠距離型か……?ピストルズみてーに誘導されてるわけでもねーが……弾幕が邪魔で射程に入れやしねぇ) こちらも20ミリ機銃で撃ち返すが、装甲を僅かに貫いただけで効いた様子は無い。 「兄貴、あの親玉ありえねーぐらいカテーぞ!」 元々機銃弾は空戦用装備であり、対艦を目的としたわけではない。 木造船ならどうにかなっただろうが、あの艦を砕くにはパワー不足もいいとこだ。 「デルフ、オメーなんか気付いた事はねーか。ささいな事でいいんだ。何か本体が撃ってきてる気配とか感じなかったか?人影とかよ」 「わかんねぇ……船員も沢山居るだろうしよ」 ただの対空機銃なら吃水船の下に入れば飛んでこない。だが、この弾幕はその下にいても襲い掛かってくる。 急速上昇、そのまま反転し背面飛行している機体をロールさせ戻し距離を取る。 座席に体を固定させているプロシュートはいいが、そうではないルイズは後ろで色々と転がりながら悲鳴をあげている。 「も、もっと丁寧に操りなさいよぉ!」 「直撃食らうよりマシだろーが!」 旗艦の弾幕ですら厄介なのに、他の船からの援護砲撃が襲ってきた。 当然、通常の砲弾なら当たるはずもないが、小さな鉛弾をショットガンのように詰め撃ち込んで来ている。 「クソッ!親玉の弾幕だけでも厄介だってのに…仕方ねぇ!トコトンやるぜッ!」 散弾を回避しつつ上昇し援護砲撃をしてくる船の真上につけスタンドエネルギーをフルパワーで老化に回し沈黙させていく。 風石によって今すぐ沈む事はないが、援護砲撃は止まる。 だが、未だに本命の射程圏内には踏み込めない。 決め手を欠いたまま弾幕を避けていると、『ストレングス』が船首を少し傾けた。 船首の向きはようやく建て直しが始まっているトリステイン軍だ。 瞬間、凄まじい轟音が鳴り響き船首砲から砲弾が放たれた。 その砲弾を迎撃すべくトリステインのメイジが総出で風の防壁を作り防ごうとするが、それを突き抜け血と肉片が辺りに飛び散り悲鳴があがった。 砲の口径、弾速、その全てがハルケギニアのものより圧倒的に上だ。 もちろん、それを知らないトリステン軍はレキシントン落しの効果もあって壊走寸前と化している。 恐らく、次に砲撃が行われれば、もうそれは止めることはできないであろう事はギーシュが決闘したら負けるぐらい確実ッ! 「ど、どうしよう…!あそこには姫様が…!」 そうは言うが、今の自分にはどうする事もできない。 必死になって自分にできる事を探そうとするが、失敗魔法しかできない以上全く無い。 無意識にポケットの中の水のルビーを指に嵌め指を握り締める。 「どうか姫様をお守りください…」 やれる事が無いのなら、せめてアンリエッタの無事を祈ろうと思った。 「兄貴!左と正面から弾幕だ!」 「分かってる!」 言われるまでも無く右側面に機体を90°傾けさせ、そのまま右下に滑るように回避。 「キリがねー……このままじゃあ燃料が持ちゃあしねぇ」 燃費がいい方だとはいえ、急速反転や上昇を繰り返している。 航続距離2000キロを誇るゼロ戦でも、そんな無茶な機動を繰り返していては、そう長く持ちはしない。 また転がったルイズが泣きそうになりながら地に落ち開いた始祖の祈祷書を拾い上げる。 持ってくるつもりは無かったが、あそこで置いてくるなどと言えば、自分が置いていかれる恐れがあったのでそのまま持ってきたのだ。 そうして開いた祈祷書に触れた瞬間、水のルビーと祈祷書が光った。 「兄貴、座席の下に何か落ちてるぜ?」 弾幕の射程圏外に出つつスタンドでそれを器用に掴み取る 「……ボルトじゃねーか。何でこんなもんがあんだよ」 それを掴んだまま、弾幕の射程圏外に出ると、そのボルトが溶けるかのようにして無くなった。 「おでれーた、溶けたぜ」 「ボルトが溶けた……?しかも弾幕の射程外に出たとたんに…溶けた以上、あのボルトは物質じゃねぇ……」 何か分かりかけてきた。ゼロ戦のものではないボルト。それが弾幕の射程外に出た瞬間溶けた事。 そして風防に空いたさっきのボルトと同じ程度の大きさの穴。 「……弾幕の正体はこのボルトか!だが、なぜボルトなんだ……?」 リゾットのメタリカのように磁力のようなものを操り飛ばしてきているという 事も考えたが、それならばボルトなどという形を取る必要は全く無い。 「兄貴…ボルトって何に使うんだ?」 「あ?こっちにはボルトねーのか?ネジのデカイヤツで金属板とかをこいつで固定すんだよ」 「じゃあ、あの鉄の親玉にも使われてんだな」 スタンドのボルト、金属装甲の船、360°繰り出される弾幕。これで何かが繋がった。 「……でかしたぞデルフ!『どこから』『どんな方法で』攻撃しているのか、お前のおかげで全て理解したぞデルフ!」 「……悪りぃ、さっぱり分かんねー」 「射程外に出たら溶けたって事は、あのボルトはスタンドって事だ! そして、あの船『から』撃ってきてるんじゃあねぇ……!あの船『が』ボルトを撃ってきている…つまり、あの船そのものが…スタンドってこったァ!!」 「な、なんだってーーー!あんなデカイやつもスタンドってやつなのかよ!」 「何でもアリってのがスタンドだからな……だが、あんだけデカイスタンドを操るとなると……本体もかなりの化けモンだな」 「スタンドはスタンド使いには見えなかったんじゃあねぇのか?溶けたって事は物質と一体化してるわけじゃねぇしよ」 「……スタンドエネルギーがデカすぎるって事ぐらいしかねーな、あんなタイプのスタンドなんざ組織の情報網にも引っかかった事ねーよ」 だが、船の正体が分かったところで、あの弾幕をどうにかしない事には詰みだ。 スタンドパワーの枯渇を待つ。Noだ。持続力A以上は間違い無いだろうし、まずこちらの燃料が持たない上に時間も無い。 弾切れを誘う。これもNo。スタンドである以上、スタンドパワーが尽きない限り弾幕は途切れない。 射程外からの機銃弾による攻撃。問題外だ。スタンドエネルギーが実体化してるという事はダメージはあるかもしれないが あの大きさに20ミリの穴を開けたとしても大してダメージにはならない上に、修復されかねない。 250キロ爆弾でも積んでれば話は変わってくるのだろうが、そんな装備はこのゼロ戦には付いていない。 ハッキリ言えば打つ手無しだった。 「なにこれ……古代ルーン文字?」 今まで魔法が使えなかったぶん、それに反比例するかのように勉強に勤しんでいたルイズである。 古代ルーン文字を読むことができたのは当然といえた。 「序文。 これより我が知りし真理をこの書に記す。この世のすべての物質は、小さな粒より為る。 四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す」 呟くような声で読み上げるが、前で必死こいて回避運動を行っている一人と一振りには聞こえてない。 「チッ!せめて弾幕の軌道と間隔さえ読めりゃあ接近できるんだがな」 「でもよぉ兄貴、近付いたら近付いたで、回避しようがねぇよ」 確かにそうだ、広域老化では効果が出るのに多少時間がかかる。 至近距離では弾幕を回避する事はできず直撃を受ければ良くて機関停止、悪くてその場で爆散だ。 「神は我にさらなる力を与えられた。四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。 神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。我が系統はさらなる小さき粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。四にあらざれば零。零すなわちこれ『虚無』。我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん」 「こっちの位置をどうやって把握してるかだな……エアロ・スミスみてーに特定のものを探知しているか……視認で撃ってきてるかだが」 レーダーなどで確認しているのなら打つ手はないが、視認で補足してきているのなら、まだ一つ打つ手はあったが、確証が無い。 「これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。またそのための力を担いしものなり。 『虚無』を扱うものは心せよ。志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。 『虚無』は強力なり。また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。詠唱者は注意せよ。 時として『虚無』はその強力により命を削る。したがって我はこの書の読み手を選ぶ。 たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。されば、この書は開かれん。 #center{ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ} 以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。初歩の初歩の初歩の呪文。第一の爆発『エクスプロージョン』」 その後に、呪文が続いたがルイズは呆然としている。 「始祖っていうわりに頭脳がマヌケじゃない……?指輪がなくちゃ祈祷書が読めないんじゃ、誰がその注意書きを読むのよ」 だが、祈祷書が読めるという事は…… 「わたしが『虚無』の使い手って事なの?」 『エクスプロージョン』と自分の失敗で起こる爆発。 効果としては同じだ。なら今まで失敗と思っていた魔法が『虚無』だったとしたらどうか。 思えば誰もあの爆発を失敗と呼び笑っていた。 ただ一人、その爆発も使い方次第でどうにでも変わる『自信を持て』と言ってくれたのはプロシュートだ。 なら、祈祷書が読める以上、自分を信じて、それに頼るしかない。 そう思った時スデに行動していた。 「このクソ忙しい時に何やってんだッ!」 座席の隙間からルイズが身を出し、操縦席にやってきて座り込んだ。 「……もしかしたら、何とかなるかもしれない……うまく言えないんだけど選ばれちゃったかもしれないのよ」 「何にだ?」 よもやスタンド能力に目覚めたのではないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。 「いいから、合図したら、ひこうきをあの戦艦に近づけてちょうだい!」 「……自信はあんのか?」 「……ぁ……る」 「聞こえねー……!自信を持ってんなら、自信を持って答えろ!」 「……あるわよ!あるから言ってるんじゃない!!」 そう答えるルイズを見て、口の端を上げ笑った。 「やれんのは一回限りだ。しくじったら次はねー。それに、こいつは賭けだぜ? もしかしたら墜とされっかもしれねーが」 「いいから近付けなさいッ!使い魔は黙ってご主人様の言う事に従うのッ!」 「了解、『ご主人様』」 急速上昇、敵旗艦の遥か上空まで駆け上がった。 「子爵、どうやら敵の竜騎士はどこかに逃げたようだが」 「ガンダールヴの能力の射程にさえ入れなければいいわけですからな… しかし、あの男がそう簡単に退くとも思えますまい、念のために艦の上空に遍在を二つ配置していますよ」 「ウキャアアアアア」 猿―フォーエバーがそう叫びを上げると壁の中にめり込み消えていく。 今までは遍在のワルドが、ゼロ戦の位置を捕捉し使い魔としての能力を使いフォーエバーに指示していたが、自らが捕捉し、攻撃を行う気になったようだ。 ストレングス上空約3千メートル、眼下に映る巨艦ですら点のような大きさだ。 もちろん酸素濃度は結構低い。そんな状態で風防を開けて、スタンドでガッシリと掴まれたルイズが風防から顔を出しているのだからスゴイ事になっている。 「ぜぜぜ、絶対に離さないでよねぇ~~~!」 さっきまでの、自信はどこにブッ飛んだのか、半泣きに近い状態でそう叫ぶ。 まぁスタンドが見えないため、何に固定されているのか分からない状態なのだが。 「どうする?止めんのなら今だぞ」 そうは言ったが、答えはスデに分かっている。 さっき見せた目には明確な覚悟が宿っていたからだ。 「ばばば、馬鹿言うんじゃないの!わわ、わたしがやらないと姫様が危ないんだから!!」 その言葉と同時に機首を巨漢に向けスロットルを限界まで絞る。レシプロ機の特性上プロペラがすぐに止まる事は無いが時間の問題だ。 巨大戦艦に向けての垂直降下。さらにすれ違い様にルイズが、『エクスプロージョン』を放つ。 言うなれば、米軍機が得意としていた戦法の一つ、急降下爆撃だ。 音で感知されないようにエンジンは止めておかねばならないが、水面に浮かぶ船とは違い、下にも空間は十分にある。 フルスロットルにし最加速するまでは十分な高度が。 これが水上艦ならバンザーーーーイと叫びながらの特攻だが、宙に浮いている事が幸いした。 もちろん、懸念はある。 エアロ・スミスのようにレーダーで特定のものを探知するようなタイプであれば早々に迎撃される。 探知か視認か、このどちらかによって、結果は違う。 賭けだった。それはもう、どこぞのギャンブラーが見たら迷わず『グッド!』と指を向け叫んだぐらいに。 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ その詠唱と共にゼロ戦が自由落下を始めた。 垂直に落下しているので風防から身を乗り出しているルイズは当然、下を思いっきり見る事になる。 掴まれているとはいえ、この高度からの急速降下である、絶叫マシーンなぞ比較にならないぐらいアレなのだが詠唱そのものは途切れる気配は無い。 「……ゲームにハマってるメローネと……同等の集中力だな」 「それってスゲーのか?」 「言いたくねーが、そういう時のメローネを邪魔できんのはブチキレたギアッチョぐらいしかいねーよ」 「あー……そりゃあスゲーな」 ギアッチョの事は聞かされていたので、そのスゴさが一発で理解できたようだ。 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド 呪文の詠唱を始めて、すぐに降下に対する恐怖心など無くなった。 なによりどこか懐かしいようなリズムが、それを許さなかったからだ。 体の中で何かが生まれ、行き先を求めてそれが回転するかのような感覚だ。 コルベールエンジンを爆破した日、自分で言っていた事が今まさに『言葉』でなく『心』で理解できていたッ! ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ 重力によりさらに加速、敵艦との距離が凄まじい勢いで詰まる。 「……風が乱れた?」 ストレングス上空で風竜に乗り哨戒中の遍在ワルドx2だが周辺の風が乱れた事に気付いた。 周りに船が多数浮いている中よく気付いたのだが、微かに乱れただけで詳しい場所も分からない。 まぁ、この状況でそれに気付いたのは、風のスクウェアだけの事はある。 それに、反応してフォーエバーも壁から出てきたが、ストレングスの船内に居る相手なら手に取るように把握できるが、船外ならそうはいかないのでワルドに任せている。 本来ならただで人間に従う機など毛頭無かったが、学ランの男にボコボコにされ辛うじて生きてはいたが色んな所が再起不能になって暮らしていたところ この男がそれを治してくれた(正確に言えば水のメイジ)というのもあるが、何故かDIO様のように仕えなくてはならないという気になっていた。 「来るか……?ガンダールヴ!」 下方、側面を見渡すが、何も無い。となれば上しかないが、あるのは陽光眩しい太陽だけだ。 だが、その太陽に影が差すと、その場所が特定できた。 「日の中か……!やってくれる!」 少し光が薄らいだ太陽の中から降下してくるのは緑の機体だった。 「……あのハゲ!日食は今日じゃあねーかよ!」 太陽を背にし、その光に紛れてギリギリまで接近するつもりだったが、日食のおかげで予定より早く探知された。 「逃げねーとモロに食らっちまうぜ兄貴!」 ここで回避する事はできるが、そうなればこの策は二度と通用しない。 つまり、アレを沈める事ができなるなる。 「いいや、ここは突っ切るしかねぇ!」 フルスロットル、最大加速しながら降下する。重力と推進力によって一気に限界速度に達し突っ込んだ。 ジュラ……イサ・ウンジュー…… その風圧に思わず詠唱が途切れそうになるが、急にそれが弱まった 「グレイトフル・デッドを前に出しといてやったから、ちったぁ……マシになんだろ」 背負わされている形になっているのだが当然見えないルイズには分かった事ではない。とにかく風圧が弱まった事だけは事実だ。 操縦している方も喋っている場合ではないのだが、同じようにスタンドの体で風圧を弱めているため何とかなった。 「ホキョァァアアア」 「止まれぇぇぇぇぇガンダールヴッ!!」 ストレングスから弾幕が放たれるが、限界速度で高速移動している飛行物体に当てるのは至難の業だ。 水平飛行している状態なら数に物を言わせ当てることもできたが、この場合は違う。 減速する気配が微塵も無い上に、むしろ加速しながら突っ込んできている。 ただ、機動飛行を行っているわけではないので、少しづつだが、弾幕がゼロ戦をかすめ始めた。 バキィ!と嫌な音をたて開け放った風防が脱落し、周りをボルトの弾幕がかすめる。 「チッ!あのハゲ……!戻れなかったら老化で全滅させてやっからな!」 「その前に生きてりゃあな……」 スデに弾幕の射程内。ストレングスまで400メートルといったところだ。 この速度なら、一瞬。だが、その分直撃は貰いやすくなる。 ハガル・ベオークン・イル…… 詠唱が終わるが、その瞬間この呪文の威力を理解した。 周辺空域全てを巻き込むであろう、その威力を。 選択肢は二つ。殺すか。殺さぬか。 破壊すべきは何か。 一瞬、迷いが生じたが直ぐにそれを断ち切る。 (『詠唱する』と心の中で思ったなら……その時スデに行動は終わっているのよね……) 翼に穴が開くが、速度は落さない。むしろ落したりでもしれば、それこそ蜂の巣だ。 風竜に乗った遍在ワルドと目が合った気がしたが、構っている暇など一切無い。 そのまま、ストレングスとすれ違うように降下し、胴体部に直撃を果たすボルトの弾幕が見えた瞬間、光の玉が辺りを包んだ。 ようやく到着した二人と一匹だが、艦隊が光の玉に包まれていく光景を見た。 「なによ……あの光は……」 「分からない……」 「でも、あれなら、トリステインが勝ったって事じゃない?」 ラ・ロシェール付近に展開し壊走寸前だったトリステイン軍からも歓声が聞こえている。 「……まだ!」 タバサがそう叫ぶと光が晴れる。殆どの艦は炎上し、甲板とマストを燃やし墜落していたが、唯一本命の巨大戦艦だけは、炎上しながらも健在な威容を見せていた。 スタンドの船という事が災いした。 本体、つまり、フォーエバーには直接ダメージは入ってないのだ。 核。ストレングスがベースとしている艦が炎上していれば墜落していただろうが、巨大なスタンド像に阻まれ、こちらは損傷には至っていない。 もちろん、船に与えたダメージの分は本体にもフィードバックされているが致命傷というわけではない。 「フフ……ハハハハハハハ!」 船の中でワルドが笑う。ただひたすら笑う。 あの光を見た瞬間、それを虚無だと確信したのだが、その伝説の虚無すらものともしない艦を手に入れた事に笑った。 「ギャオオオォォォォ」 だが、その笑いをも打ち消す獣の叫びが辺りに響き渡る。 その声の主はフォーエバーだ。 船体を焼かれているのだから、当然ある程度本体も焼かれている事になる。 こうなれば、ワルドに対しての忠誠など一切無い。使い魔になって日が浅いというのも災いした。 敵を倒すという本能のみが頭を支配する。 スタンドに目覚めているだけあって、普通の猿とは違う高度な頭脳を持っているのだ。 通常なら制御できていたが、焼かれた事でベイビィ・フェイスの息子もびっくりな暴走っぷりを始めている。 主砲はスタンドではなく実弾なので、それを込める乗員などその他多数乗船していたが、一人の例外も無く船の中に飲み込まれようとしている。 「こ、これは……馬鹿な……!」 ワルドとて例外ではない。スデに半身を底なし沼にハマった旅人のように船体に埋めている。 必死に、フォーエバーと連絡を取ろうとするが、怒り一色のフォーエバーにはそんなもの聞こえてすらいない。 「アレでまた墜ちねーのか……」 「もー無理だ、逆立ちしても無理だね」 機首を翻し、光の起こった方向を見たが、炎上しながらも依然として健在な戦艦が上空にあった。 弾幕の射程に入らないようにしていると、見慣れた竜が戦艦に近付くのを見た。 「あの馬鹿が……ッ!死ぬぞ!」 タバサ&キュルケinシルフィードなのだが、どうやら戦艦上空に向かおうとしているらしい。 へばっているルイズを後ろに押し込むと、再び高度を上げるが、シルフィードに向け弾幕が放たれた様子は無い。 「やはり、視認で撃ってきたってわけか……?なら本体はどこだ?」 甲板を見渡しても本体らしき者は居ない。中に本体が居ると判断し広域老化を仕掛けるべく甲板上空に付けるが、それより先にシルフィードがそこに居た。 「オメーら邪魔だ!」 そう叫ぶが、距離もある上に、ゼロ戦自身の爆音で聞こえていない。 船自身がスタンド。迂闊に接近するのは自殺行為だ。グレイトフル・デッドの 長大な射程があればこそ、ギリギリまで接近したのだが、シルフィードは近付きすぎている。 「ここまで近付いても攻撃してこないなんて……何があったのか知らないけど先手必勝ね!」 普通の船なら、近付くまでに船員なりが攻撃を仕掛けてくる。旗艦なら当然メイジも居るはずだ。 だが、現在フォーエバー暴走中につき船から反撃が行われる事は無い。 それで、二人して乗り込もうと思ったのだが、この船自身がスタンドなどとは微塵も思っていない。 そして、シルフィードが最も接近した時、二人と一匹に船体からパイプなどの部品が絡みついた。 「なな、何よこれ!」 「……引っ張られる!」 (こ、こいつおねーさまに何をーー!……はッ!まさか、その触手っぽいモノでおねーさまに、あんな事やこんな事を!……少し見てみたい気も!) ちょっとアレな想像をして悶えているシルフィードだが、相手はあの家出少女(14)に手ぇ出そうとした猿。 何が言いたいかというと……正解である。 獣の叫びを上げながら、壁から巨大な猿……オラウータンことフォーエバーがにじり出てくる。 怒りで顔を通常の三倍の如く赤く染め上げ、絡め取られている二人+一匹に近付いていく。 タバサが辛うじて握っていた杖で『ウィンディ・アイシクル』を唱えたが、フォーエバーに当たる直前に 床の壁がフォーエバーをガードするかのように盛り上がり氷柱を阻んだ。 「……錬金!?……違う……まさかスタンド!?」 改めてフォーエバーを見据えるが、刺さった氷柱を抜き、火傷に押し当てたり、かじりつつタバサを見ている。 「猿のくせに……気に入らない顔してるわね…!」 そっち方面の事に関しては百戦錬磨のキュルケさんにとってはその猿の顔は今まで見飽きたような顔だ。 「なに?この微熱のキュルケを無視してタバサに?……いい度胸してるじゃない!」 もちろん、そんな露骨な表情で迫ってきた男達は火葬される事になっているのだが、それが、自分にではなくタバサに向けられている事が気に入らなかった。 Fuck you……ブチ殺すぞエテ公 そんな危ない呟きが聞こえたのは多分幻聴だ。 そして、『フレイム・ボール』が放たれるが、フォーエバーの遥か手前で壁に阻まれ炎上している。 魔法―ストレングスから見ればスタンド能力だと思っているのだが、それを見て、邪魔だと言わんばかりにキュルケとシルフィードを船体に半身を沈めさせる。 「ヤッバイ……逃げなさいタバサ!」 「……無理」 人間の五倍近くの力を有するオラウータンだ。並の人間でも太刀打ちできないのに、普通より小柄なタバサが拘束から逃れるのは不可能といえた。 「ウホ、グフホホホ」 氷をかじりながらモット伯もドン引くような笑みを浮かべゆっくりと近付く。 (ああ!おねーさまの初めてが、あんな猿に!?……でも大丈夫なの!後でシルフィが慰めてあげるのね!) フォーエバーとは別の方向でなんか興奮しているシルフィードを見て、これを乗り切ったらどんなお仕置きをしようかと思ったのだが、それどころではない。 だが、フォーエバーとタバサの距離が3メートルに達したところで、フォーエバーが止まり右手を横にかざした。 瞬間、その横に『ウィンディ・アイシクル』を止めたものより厚い壁が盛り上がり、そこに機銃弾が撃ち込まれた。 「チッ!」 それと同時に、上空をゼロ戦が通り過ぎ、その場に風が流れる。 「最悪、巻き込もうかと思ったが……氷食ってやがんな」 忌々しげに眼下のフォーエバーを見るが、ガリガリと氷を貪り余裕とアレが混じったムカつく笑みを浮かべている。 本来ならオラウータンと人間の寿命差でフォーエバーが先にくたばるのだが、タバサが魔法を使ったのが仇になった。 こうなれば、広域老化は役に立たない。 直触りは問題外だ。ゼロ戦を捨てたとしても船上はフォーエバーのホーム・グラウンド。 例えるなら、虎の球団のファンが大勢乗った電車の中で一人オレンジ色のマークの球団の帽子を被り、それに乗るようなものだ。 機銃弾も通じない以上、残った手段は、キュルケの炎でフォーエバーの体温を上げさせる事だったが肝心の魔法がフォーエバーの遥か手前で止められているから期待できそうにない。 もう一度反転し、機銃を撃ち込むが、さっきと同じように壁に阻まれフォーエバーに届いていない。 「エテ公が……ここで、撃ってくれば墜とせるってのに、やらねーって事は…ナメきってやがんなッ!」 「こいつじゃ、あの壁を貫通できねーしな。どうするね兄貴」 連続して同じ場所に撃ち込めば貫通できるだろうが、ゼロ戦自体が高速で動いている以上それはできない。 ガンダールヴ印の効果で精密射撃自体は可能になっているが、あの壁を貫通できるぐらい同じ場所に連続射撃をするというのは無理だ。 遠すぎれば弾はバラけるし、近ければ、その速度故に貫通するだけの量の弾を撃ち込めない。 「ホワイト・アルバムを相手にしてる気分だぜ……クソッ!」 あの堅牢な装甲も、同じ箇所に立て続けに攻撃を食らったり、一点集中の強大な負荷をかければ破れるのだが、それをやるのがディ・モールト難しいのだ。 つまりまぁ……目の前の猿がギアッチョと被り、ムカついてきた。 「速すぎるなら速度落せばいいんじゃないか?」 「これで限界だ、これ以上落すとこいつが墜ちるからな……」 もう少し落せない事も無いが、水平飛行をギリギリ維持できる速度だ。上昇や旋回などは当然できない。 まして、照準の調整などしようものなら即、失速して墜落だ。 「いっその事、こいつを空中で止めちまうってのはどうだ?」 「馬鹿かオメーは?プロペラが回って前へ進んでるからこいつが飛んでんだろーが」 「いや、魔法でさ」 悪くは無いが、誰がやるかが問題だ。 タバサは、もうスデにがっつりと絡め取られ、ルイズはヘバっているし、爆発を起こしかねない。 となると残っているのは、半身を埋めているキュルケだが、フォーエバーに気付かれずに伝える手段が無い。 スタンド使い同士なら、意思疎通も可能だが、そうではない。もっともフォーエバーにも聞こえてしまうが。 直接伝えるのがベストだが、そんな真似ができる人間はここには――― 「……オメー確か丈夫な方だったよな?」 「ああ、そりゃあ伝説だしな」 「それじゃあ、今から言う事をしっかり覚えとけ」 「んー?どうするんだね?」 説明し終えると、デルフリンガーの柄を握り、キュルケの方を見る。 半身を埋めているものの、杖を持った方の手は出ている。良好だ。 「イタリアに戻れたら言えねーから、先に言っといてやる。世話になったな『相棒』」 「兄貴……俺の事を初めてそう言ってくれたな……!もう泣きそぉぉぉぉぉぉぉぉ」 言い終える前に、デルフリンガーをキュルケの方に向けブン投げる。 見下ろすと、見事にキュルケの近くに刺さったデルフリンガーとキュルケが何やら言い合っているが問題は無いと判断し再び上昇する。 スデに、日は半分欠けている。一発勝負だ。 「あたしに刺さってたらどうしてくれんのよ、この剣は」 「俺に言うな。投げたのは兄貴だぜ…で、大丈夫なんだな?」 「任せときなさいな。あのエテ公に一泡吹かせられるんなら何だってやるわよ。……タバサも色々と危ないみたいだし」 猿を睨むが、腕をタバサに向け動かしている。 タバサの方も見るが、フォーエバーが腕を動かす動きに合わせパイプがグネグネと動いている。 正直言って、触手そのものと言ってもいい。 ジュルリ そんな音がしたが、デルフリンガーは幻聴だと思った。というかそう思わせてください。 「そ、そろそろ、くるぜ」 キュルケの方は見ないでそう答える。見れば今までの価値観が崩れてしまいそうな気がする。 今までタバサの方に向けていた腕を上に向けるとフォーエバーを覆うように壁ができた。 それと同時に、直上方向から機銃弾が浴びせられるが、さっきと同じで貫通はしない。 20ミリ機銃でも突破できない厚さの上にスタンドだ。 普通のものより強化されている。 特攻という事も考えたが、この船は俺のものだ。壁を介して何時でも逃げられる。 何より、この近さでは、この少女も巻き込むはずだ。 上は放っておいても問題無い。となれば、何かしてきそうなのは捕獲している一人と一匹かと判断し視線をメンドクさそうにそっちに向けると 赤髪の女が杖を振っている事に気付いた。 それを見るや、手を掴むように握りこむ。 「がッ……レディにこんな事するなんて……礼儀を知らないわね……エテ公が……うぐぁぁ……!」 (痛い痛い痛い痛い痛い痛いのーーーーー!) 人間の5倍近いオラウータンの握力とスタンドパワーによる締め付け、下手すれば埋もれている部分から切断される。 フォーエバー自身、キュルケにもアレでナニな事をするつもりでいたが、ド真ん中ストライクゾーンなのはタバサだったため、放置していたが害になるのなら始末する。 そう判断し、そちらに集中を向けたため、それが一手遅れる事になった。 直上方向から壁を穿つ音が聞こえていたが、その音が長すぎる。 機首を翻していなければ機体を船にぶつけているはずだが、それも無い。 思わず上を見上げるが、見た物は同じ箇所に銃弾を受け、脆くなった壁を突き破り己の額に向かってくる20ミリ機銃だった。 「資料で見ただけだが…ナランチャがトドメを刺す時はこう言っているようだな……」 機体を90°傾けさせ機首をフォーエバーに向けた機体の中でスタンド使いにのみ聞こえる会話をフォーエバーに向ける。 「ブゴォォォ!ウグアボゴォォォォ!!」 勢いが殺されている弾とはいえ、生物を貫く事ぐらいはできる。 だが、勢いが殺されているだけあって、一発で致命傷に至らなかった事が、この猿の不幸か。 「ボラーレ・ヴィーア(飛んでいきな)…だったか?」 トリガーを押しっぱなしにし銃身が焼きつかんばかりに弾切れまで撃ち尽くした。 「はぁ……ものすごい締め付けだったわね……千切れるかと思ったじゃない」 ちょっと言葉がアレだが気にしない。 猿とタバサの方を見るが、どうやらギリギリ一歩手前で無事なようで一先ず安堵した。 (死ぬかと思ったのね……でもこれから、泣き崩れるおねーさまをシルフィが優しく抱いて……) (なにやってるの?) (はッ!おねーさま、何もされなくてよかったのね……) 現実に引き戻され、ちょっと残念そうに答えるシルフィード。自重しろ。 (……お仕置き) (へ?な、何を!?ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサヤッダッバァァァァ) 解放されたタバサが恐ろしく素早い動きで、シルフィードの口に捻じ込んだのは、ご存知『草』が入ったアレだ。 韻竜も一発で昏倒させるその威力に引いたが、船体が溶け始めた事にはビビッた! 「兄貴がこの船スタンドって言ってたから、あのエテ公がスタンド使いって事だな」 「……それって、あの猿を倒したからこの船が消えてるって考えていいの?」 「そういう事だな」 落ちる。そう思った瞬間、垂直に空中で浮いているゼロ戦を水平に戻した。 タバサは気絶したシルフィードで手一杯だ。 直上方向から垂直に降下し『レビテーション』で浮遊させ装甲を貫通できるまで機銃弾を叩き込む。 推力を落としているため、前に進むこともなく墜落もしない。 水平方向なら惰性で照準がズレるため、降下しながらの作戦だ。 水平になった瞬間、再稼動。『レビテーション』が切れる前に飛行可能速度に達するべく、勢いよくプロペラが回転し、その場を離れる。 「どーやら任務完了ってわけだが……間に合うか?」 上空を見上げると日は2/3といったところか。 このまま行けば間に合うだろうが……後ろでヘバっているルイズを見た。 船があった場所を見ると、スタンドが溶けながら核となる船が炎上しながら落ちていっている。 スタンドは溶けたが炎はそうではないため燃え移ったようだ。 タバサとキュルケはスタンドの中に飲み込まれていた船員をそっちに移している。 ストレングスにはメイジも居たため、まぁ何とかなるだろう。 ワルドっぽいヤツも居たような気がしたが、早々に逃げたようだ。 「あっちも手一杯ってわけか……仕方ねーな」 言いつつ機首を下げようとすると、後ろから声がかかった 「なに……やってんのよ?……帰るんじゃなかったの?」 「オメーみてーなの連れていったら、オレが色々困るんだよ」 ルイズが付いてきて、なおかつチームの連中が生きて万が一にでも見られた日には、ハイウェイ・トゥ・ヘルもんである。 そうでなくても、ボスを暗殺せねばならないのだ。暗殺チームの戦いにルイズを巻き込む気は無い。 そう言うが、左手のルーンがさっきよりも少し強く光っている事には気付いていない。 「……わたしが邪魔ならハッキリそう言いなさいよ。いいわ、今日であんたクビね!」 「あ?イカレたのか?この状況で」 「好きにしていいって事よ……元の世界にでもイタリアってとこにでも勝手に帰りなさい」 「だからオメーを連れて行く気は……な……!……てめー何やってる!外は時速350キロだぞ!!」 後ろに居たルイズが、また隙間から前に出てきて、外に身を乗り出そうとしている。 この高さから落ちれば、速度の関係無しに紫外線の直撃を受けたコルベールの毛髪が抜け落ちるぐらい確実に死ぬ。 「わたしを誰だと思ってるの……!虚無の使い手『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』よ?」 「……スタンド使いも能力の目覚めたてが一番危なっかしいんだよ。……本気か?」 「虚無の使い手のわたしが、使い魔如きに心配される覚えなんてないんだからね!でも一つだけ命令よ」 「クビなんじゃあなかったのか?」 「う、うるさい!一々揚げ足取るんじゃないの!……その組織ってとこを相手にしても死なない事」 「オメーに言われるまでもねーよ。オレ『達』は簡単には死ななねぇ」 「な、ならいいわ!……あんたも少しはわたしを信頼してよ……」 「……マジってわけか……止めはしねーが後ろに気をつけろ。後で見たらオメーの肉片が付いてましたとかじゃあ洒落にもならねぇ」 「い、嫌な事いわない!……皆に伝えて欲しい事は無いの?」 「アリーヴェ・デルチ(さよならだ)。こいつだけで十分だが、しばらく時間が経ってから言えよ」 「なんで?」 「……オメーがそれ言った後に帰れずに戻ってきた時の気まずさを考えてみろ」 「あー……それ、なんかすっごく分かるわ」 別れの挨拶をしてから、後でその本人が現れる。B級映画でもやらない、洒落にもならない行為だ。 「それじゃあね……今だから言うけど結構楽しかったわよ」 「餞別だ、グレイトフル・デッドで運んでやる。あと、デルフの鞘も持っていけ」 言うと同時に、ルイズを持ち上げる。 「死んでも責任取らねーからな」 「く、クビにした使い魔に責任取ってもらう必要なんて、無いわよ」 「言ってろ」 フルパワー。尾翼に当たらないように放り上げるようにルイズを投げた。 投げると共にフルスロットル、太陽に向け急速上昇。 少し気にはなったが、後ろは振り向かない。 一端の覚悟を持って望んだのだ。信頼してやるのが礼儀というものだろう。 さて、こちらは重力に従って降下しているルイズだ。 確信があったわけではないが、自分の系統を見つけた事により、それも使えるであろうという奇妙な感覚があった。 「落ち着くのよ…ルイズ・フランソワーズ……落ち着いてやればできるわ……あいつも言ってたじゃない」 風圧で手に持つ杖が飛ばされそうになるが、しっかりと握り締める。 これを飛ばされたら、パール・ジャム決定だ。 呪文を詠唱し風圧に逆らいながら杖を振ると降下の速度が落ちる。 「『レビテーション』……やっと成功ってとこね」 地面に着陸すると同時にガクッと意識が遠くなる。今ので最後の最後まで精神力を使い果たしたらしい。 完全に意識を失う瞬間、キュルケとタバサが近付いてくるのが見えた。 そして、翌日。学院で目が覚めたルイズだったが…使い魔がどこにも居ない事に……泣いた ←To be continue...? 戻る< 目次 続く
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「……とんだ目にあった。こういうのは、わたしのキャラじゃなんだがな」 まだ違和感の残る首を押さえつつアヴドゥルが言う。 「何よ。何か文句でもあるの!?」 それを嫌味と取ったのか突っかかるルイズ。 「いや、そうではない……しかし、コレを片付けるのか」 「…そうよ。私も手伝って上げるからさっさと働きなさい!」 (普通、逆のような気がするが) 慣れというのは恐ろしく黙って作業に入ろうとするアヴドゥルだが、ルイズの姿を見て止まる。 (なぜ爆発の中心にいて、無事なのは知らんが…。ボロボロの格好のままというのもな) ルイズに怪我はないらしいが見事に外見はボロボロだ、服には穴が開き、全身を煤で汚している。 いても非力な上、今までの行動から率先して掃除はしないだろう。 また、必死に隠しているようだが、落ち込んでいるのが分かる。 (しばらく一人にしたほうがいいな) それらを考慮した大人のアヴドゥルは、 「掃除はわたしがやっておこう。まずは着替えて来たらどうだ?」 遠まわしな戦力外通告を出す。 もちろん、そんな言葉の裏に気付かないルイズ。 「なんで、あんたに命令されなきゃいけないのよ!」 「貴族がいつまでもその格好ではまずいだろう?」 「…う。それはそうだけど……」 「着替えが終わってから、手伝ってくれればいい」 「確かに…、先に着替えたほうがよさそうね。いいこと、私がいないからってサボるんじゃないわよ!」 必要の無いキツイ釘を刺してからルイズは教室を出た。 「なんでこうなるのよ」 ボロボロの姿で自室へ帰りながら、ルイズは落ち込み呟く。 召喚したのが平民とはいえ、初めてまともに魔法が成功し、やっと自分は『本当』の意味でメイジになれたと思った。 誰にも『ゼロ』なんて呼ばれバカにされることもなくなり、輝ける未来が開けると思っていた。 そして……、 (……ちいねえさま) いつもルイズに優しくしてくれた、姉のカトレア。 ようやく憧れの姉に自分の魔法を見せることができると思っていた分、落胆は大きかった。 (でも、それが何よ!) この程度で負けるほどルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは弱いのか? 否! この程度で負けるようなら、とっくの昔に引き篭もっている。 「たまたま、偶然、ちょっと失敗しただけよ!」 少し後ろ向きのような気がするが復活を果たすルイズ。 元気が出ると、周りのことを考える余裕が出る。 教室でのアヴドゥルを思い起こす。 冷静になると分かったが、どうやら気を使われたようだ。 ちょっと感謝の気持ちはある。 だが、ご主人様が使い魔に心配されるようではだめだ! (あいつ、余計なお節介なんか焼いて) ゆっくりだった歩く早さが、段々と早くなる。 そして、部屋に着くなり急いで着替え、体を拭く。 早々と身支度を整えたルイズはアヴドゥルの待つ教師へ急ぐ。 使い魔だけに自分の不始末を押し付けるのを、 (そんなの……貴族じゃない!) 強くルイズは心で否定した。 合流したルイズのがんばりもあり、なんとか昼休み前に掃除は終了した。 アヴドゥルやルイズにとって波乱の昼飯が始まる。 もちろんみんなの大好きな彼にとっても……。 ルイズの言葉通り、アヴドゥルの昼飯は朝より『少し』豪勢になっていた。 実際には、パンとスープに『ゆで卵』が新しく増えているだけ。 「これで『多め』か」 「何よ。文句あるの?増えただけでも感謝しなさい」 労働による空腹もあり、早々に食べ終えたアヴドゥルは、ルイズが上品に食べているのをしばらく眺めた後、辺りを見回す。 モギュモギュと、何回もよく噛み食べるルイズは食べるのが遅く、もう終わっている生徒が多い。 デザートを食べながら姿や、雑談している姿が多く見える。 その中でも、出入り口周辺でメイドに向かい合う集団が目に留まる。 どうやら、金髪で一人だけ趣味の悪い服の少年が、メイドにクレームを付けているようだ。 今にも土下座をしそうなメイドの姿がおもしろいのか、にやにや眺めている周りの連中。 あまりにもな光景に、注意しようと腰を上げかけた時、メイドの顔が見えた。 「あれは…シエスタか?」 (ますます放って置けなくなったな) まだ食事中のルイズに、 「少し用事ができた」 一言残し、返事も聞かずアヴドゥルはシエスタに近寄っていく。 「その辺にしておけ」 いきなりの声に、シエスタを責めていたギーシュの声が止む。 「なんだ、君は?」 「何があったのかは知らぬが。これは少々やりすぎだ」 涙を浮かべ、土下座寸前のシエスタを見つつ、アヴドゥルは言い放つ。 「貴族なら貴族らしい態度を取れ」 「なッ!?」 『ゼロ』のルイズの使い魔である『平民』に咎められたギーシュに、周りからの野次が飛ぶ。 「そうだぞーギーシュ」 「元々、二股かけてたお前が悪いんだからな」 「もてねぇつらさがお前にわかるか?二股の罪を黙って受けろ!」 最後の……アフロのピザは怨念が篭っていそうだ。 ギーシュも、メイド-シエスタを泣かすほど脅かしたかった訳ではない。 ただ軽く説教し、犯した失態(二股)を誤魔化したかっただけだった。 (それが…どうしてこんなことに) 平民とはいえ、女性の涙に弱いギーシュは心の中で泣いていた。 どうにか話題を変えようとギーシュはあまり無い脳みそをフル回転させ、 「どうやら『ゼロ』のルイズの使い魔は、貴族に対する礼儀というものを知らないようだな」 さらに話を大きくし誤魔化すことにした。 「敬意を払う相手は選ぶんでな」 「よかろう、ならば君に貴族の礼儀というものを教えてやろう」 そこでチラッと視線を周りに送り、 「ヴェストリの広場だ。着いてきたまえ」 言い捨て去って行くギーシュ。
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アヴドゥルは決闘の翌日に自分の行動がいかに浅はかだったか気付く。 ゼロ魔世界の住人にとって未知の力-スタンド-マジシャンズ・レッド………そんなものを大っぴらに使ってしまったことだ。 (スタンドの)解析のため研究所に送られ、モルモットにされる可能性は非常に高い。 そう易々と捕まるつもりはない………が相手は国。本気で来られては一人のアヴドゥルになす術はない。 ちょッ、やばくねwな感じで内心ビクビクしていたアヴドゥルだったが。 しかし、心配など意味の無いかのように特に何も無く。 実際は-ルイズ以外の貴族が未開の地から来た『亜人』とアヴドゥルを認識-教師間で危険指定され警戒を向けられることになっていたが。 数日もするとアヴドゥルも忘れ、今までより有意義な生活を送り始める。 どの辺が有意義になったかというと…… まず、ルイズからの待遇が『かなり』上昇したのがいえる。 使い魔のアヴドゥルが変な力(スタンド)を使え、ご主人様であるルイズが魔法すら使えない。 癇癪持ちのルイズなら当然、アヴドゥルに勝手な言いがかりを付けるところだ。 しかし、そこはなんだかんだでおっさんのアヴドゥル。伊達に知能派を気取ってない。 上手く煽てて-あの爆発は強力。異世界から召喚するなんて伝説級など-言いくるめようとし。 以外に単純なルイズは-メイジの実力を見るにはまず使い魔を見ろ-という常識もあるため、簡単に納得しご機嫌急上昇。 移動時は今まで『ゼロ』と呼んでいた連中に-あんたの使い魔なんて目じゃないのよ-とでも言いたげに、 後ろに従えたアヴドゥルを慎ましげな胸を張り見せびらかす始末。 苦笑しながらも大人しくアヴドゥルが付いていくため、優秀で従順な使い魔にルイズの心も広くなり、 (アヴドゥルの周囲に生徒が近づかないため)席に着き食事(部屋から出てこなくなったギーシュの分)をする権利を与える。 他にもアヴドゥルの話にも耳を傾け、ルイズも少しづつだが信頼関係を築こうと歩み寄っていく。………デレ期にはまだ遠いけど。 また、シエスタからの尊敬の眼差し。女子高生くらいの娘からの視線に、思わず年甲斐もなくはしゃぎそうになるおっさん。 シエスタに朝の選択を手伝ってもらう代わりに、アヴドゥルも手伝いをするようになり急速に仲良くなっていく二人。 ルイズもアヴドゥルに恋愛感情なんて『一切!微塵!』も抱いていないため何も言って来ず。 安心?して憧れのおじさんキャラを堪能するアヴドゥル。 さらに、あの炎に皆感激したらしく、使い魔会議によって学院の使い魔のボスに目出度く就任することになった。 フレイムはもちろん、きゅいきゅい、ロビン、モグラなどと共に中庭で宴会をし交流を深める。 それを見た生徒から『魔物使い』の噂が広まり。ますます生徒や教師から敬遠されることになる。 あとは………ロングビルとの接触がある。知的そうな顔立ち。クールで落ち着いた雰囲気。何より巨乳! 『少し』おっぱい星人なアヴドゥルにとって、かなりストライクポイントに来る女性だ。 スタンドについて熱心に聞いてくるロングビル。大人の纏う色気につい口が軽くなってしまうのも仕方なく。 世渡り上手なロングビルの話術で、何度も話している内に-まじ?春来た!?-となってしまうのも仕方ないことだった。 この件についてもルイズからは-ほどほどにしときなさいよ-との一言のみ。放任主義にすることにしたようだ。 仕事に差し支えない程度で、少しでもロングビルの好感度を上げようとがんばるアヴドゥルだった。 そして、今日もシエスタといっしょに働き、ロングビルと談話するアヴドゥル。 …後ろで見ている親友フレイムに気付くことなく。 …………微熱の夜が来る。
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『息子』の能力が解除された事により、シエスタ及び村民も元に戻ったが、ルイズ達は状況説明とかをどうするのかディ・モールト心配だったが 「ねぇ…本気で夢で通すつもり?」 「スタンド使いですらなくメイジでも無い連中に、今までスタンドに別の物質に変化させられてました。つって信じるヤツが居ると思うか…?」 「………メイジでも、先住魔法って言われても納得できるかどうか怪しいってとこね」 「一応、怪我人やバラされた連中も居ないみたいだしな、事を荒立てると厄介な事になる」 とりあえず、シエスタ以外はスタンドの事を全く知らないので、夢という事で納得して貰う事にした。というか無理矢理納得させた。 駄目だった場合最悪先住魔法で通すつもりだったが、村や村民に傷一つ無い事から、どうにかなり、本命の『竜の羽衣』を見る事に漕ぎ着けた。 「こっちが寺院なんですけど…さっきのは何だったんですか?」 「あれもスタンドだ。…どういうわけか知らないが、本体は来ずにスタンドだけが中途半端な形で来て暴走してたみたいだが…迷惑をかけたな」 「え!いえ!気にしないでください!皆も無事だったんですし」 暴走状態の息子のせいとはいえ、身内のスタンドの不始末という事でそれなりに対応を取らねばならない。 それで出た言葉が『迷惑をかけた』であるが、意外な言葉にその場の全員が半ば唖然とした顔をするハメになった。 まぁ、列車で乗客を巻き込んだ立場であまり言える言葉ではないのだが、ギャングでも人の子。悪いと思えば謝る事だってある。 世話になった人間を巻き込んだのなら尚更なのだが、ルイズが魔法を成功するぐらいのありえない発言には全員ビビったッ! 「……今、なんて言ったの?」 「ダーリンが人に謝る姿なんて始めて見たわね」 「記録が必要」 「オメーら、何か人の事勘違いしてるな」 何か色々と言いたくなったが、全てメローネが悪いという事でこらえた。 (あのヤロー…戻った時に、まだ生きてたら、あいつのコレクション半分捨ててやる) 相変わらず、あの夢では仲間達の最期の姿を見るが、夢を見てあいつらが死んだなどと納得するほどドリーマーではない。 まだ生きていたらとは思うが、なるべく生きて栄光を掴んでいて欲しいと思う。 敗れていたのなら、それを捨てる事もできないのだから。 そんなこんなで草原の片隅に建てられている寺院に着いたのだが、奇妙な違和感を覚えた。 「…この寺院どっかで見た事ある形だな」 他の4人には聞こえない程度の声でそう呟く。 丸木が組み合わされた門の形。石の代わりに板と漆喰で作られた壁。木の柱。白い紙と、縄で作られた紐飾り。 確かにどこかで見た事がある。 そう思いながら、中に入った瞬間どこで見たかを思い出した。 「…あの茶と同じか」 あの時飲んだ茶と同じ。つまりこれを見たのは日本だと思い『竜の羽衣』に目をやるとそれは確信に変わった。 キュルケやルイズは、気のなさそうにそれを見て、タバサだけは好奇心を刺激されたのか、興味深そうに見つめている。 「こいつは…メローネがやってたゲームであったが…確か零式艦上戦闘機…通称『ゼロ』だったか」 「だ、誰が『ゼロ』よ!」 「オメーじゃねぇよ」 『ゼロ』という言葉に反射的反応をするルイズとそれに突っ込むプロシュートを見て、シエスタが覗き込んできた。 ちなみに、メローネがやっていたゲームは『ゼロパイロット~銀翼の戦士~』だ。 メローネが、操作をミスって建物や戦艦にぶつかる時、いちいち「ジオン公国に栄光あれーーーー!」と叫んでギアッチョにキレられていたので覚えている。 「プロシュートさん、これをご存知なんですか?」 「オレも詳しくは知らないが、五、六十年前の日本の戦闘機だったはずだな」 「せんとうき…ですか?」 「ああ、空戦を目的に作られた飛行機だな」 「これが、こないだ言っていた、ひこうきなんですか?」 「もう旧式だが……アレで見たのが確かなら、最高で時速500キロは出たはずだ」 「時速500キロ?それどのぐらい速いの?」 「1メートルが1メイルってんだったな。五十万メイルを一時間で飛ぶ事ができるって事だ」 「このカヌーに翼を付けただけのようなモノがシルフィードより速く飛んだりするの!?」 「旧式機だからな。今あるやつなら、こいつの2~3倍は速く飛ぶ」 「この翼じゃ羽ばたけないと思うんだけど…」 ルイズとキュルケはそのブッ飛んだ速度についていけないでいる。 タバサの方はこれがどうやって、そんな速度を叩き出すのか興味津々といったところだったが。 「どうやって飛ぶの?」 「…コルベールが作ってたやつがあったろ。アレが発展したエンジンを積んでいて、それでそこのプロペラが回って飛ぶ。 まぁそれだけじゃ飛ばないんだが、翼が空気を掴んで楊力を得る。鳥でも羽ばたいたりせずに、気流に乗って滑空して飛んでる時あるだろ。アレと同じだ」 分かる範囲で説明したが、キュルケ、ルイズ、シエスタは未知の技術に頭から煙が出かかっている。 唯一タバサはシルフィードが滑空している所をよく知っているため、辛うじて理解できていたが、やはりそのとんでもない速度に驚いていた。 「ふみゅ…それでこれ、飛ぶの?」 「…話し聞いてたか?」 「こんなのが、そんな速度で飛ぶなんて急に信じられるわけないじゃない…飛べないって言ってたんだし」 「そういやそうだな…何か他に遺したもんは無いか?」 「えっと…あとは大したものは……お墓と、遺品が少しですけど」 「そいつでいい」 シエスタの曽祖父の墓は、村の共同墓地の一角にあった。他の墓が白い幅広の石でできている中、ただ一つだけ黒い石で作られた墓石があり目立っている。 「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、誰も読めなくって。なんて書いてあるんでしょうね」 「『海…少………木……、……ニ…ル。』…駄目だな。メローネなら読めるんだろうが…オレじゃあ少ししか無理だ」 「この文字が読めるんですか?」 「ああ、行った事はあるから少しはな。こいつは日本語だ」 「日本語…ですか?」 「オレんとこの世界の国名だな。まぁ文化的に東から来たと言えばそうなる。 …こっちじゃあ見ない色だったから珍しいと思っていたが、オメーの髪と目の色はひい爺さんから受け継いだもんだろ」 「は、はい! どうしてそれを?」 「日本に住んでるヤツらは基本的にその色だ」 再び寺院に戻り、プロシュートは『竜の羽衣』に触れると左手のルーンが反応して光り出した。 「なるほどな…確かにこいつも武器には違いないか。しかし…便利っつーか無茶苦茶っつーか何でもアリだな」 操縦法やシステム、構造まで瞬時に理解できたのだが、何故飛ばなかったかということまでは分からない。 「ベイビィ・フェイスを燃やすんじゃあなかったな。…いや、メローネが居ないのに制御できるわけねぇか」 壊れているのなら、『息子』にパーツを作らせようかと思ったが、スデに終わった事なのでそんな事を考えても意味は無い。 散々探り燃料タンクを開くと、飛ばなかった原因が判った。 「そりゃあ飛ぶわけねーな。残量『ゼロ』。ガス欠ってわけだ」 「ゼロって…何が入ってないの?」 「燃料、こいつの場合ガソリン…まぁこっちで言う風石が無いってこった」 「それじゃあ、そのガソリンってヤツがあれば飛ぶのね?」 無言でそれを肯定すると遺品を取りに行っていたシエスタが戻ってきた。 その古ぼけたゴーグルを受け取る。あのゲームでも確かこんな感じのゴーグルを着けていたはずだ。 「ひいおじいちゃんの形見、これだけだそうです 日記とか、あればよかったんですけど、残さなかったみたいで。ただ、父が言っていたんですけど、遺言を遺したそうです」 「まぁ、下手に遺書にされて日本語で書かれて読めないとかじゃあ話にならないからな」 「それで遺言なんですけど、あの墓石の銘を読めるものが現れたら、その者に『竜の羽衣』を渡すようにと」 「全部読るわけじゃあないが、一応その権利はあるってことか」 「管理も面倒だし……大きいし、拝んでる人もいますけど、村のお荷物らしいんです。少しでも、読めるって言ったら、お渡ししてもいいって言ってました」 「ガソリンをどうにかしない事には荷物には変わりないんだが…何時か使う機会があるかもしれねぇし、ありがたく貰おう。オメーにもまた貸しができたな」 「それじゃあ、それが飛んだらそれに乗ってこの村に来てください。 あ、それともう一つ、『竜の羽衣』を陛下にお返しして欲しい、だそうです」 「そういや、日本にも確か『テンノー』ってのがいたな。まぁ多分それだろ」 「ひいおじいちゃんは、『竜の羽衣』は二つあって、一つはこの村に。もう一つは日食の中に消えたって言ってました」 「消えた…?こんな目立つもんなら他に見付かってるはずだが…日食か…可能性はあるな」 「へ?どういう事ですか?」 「消えたって事は、日食の中に向かって飛べば、イタリア…いや地球に戻れるかもしれないって事だ。まぁ日食なんざ、そうそう起こるもんじゃあないが」 それを聞いてからシエスタが後悔した。『竜の羽衣』が飛び、日食が起これば戻ってしまい二度と会えなくなるかもしれないのだから。 ルイズもルイズで結構テンパっている。 最後の最後で帰還手段かもしれないものが見付かってしまっただけに、どう反応していいのか分からないでいる。 (え…?帰っちゃうの…?) 思考が少しばかりアレになるが、日食が来る時がまだ分からないので何とか持ち直し、とりあえずシエスタの家に行く事になった。 その日、プロシュート達はシエスタの生家に泊まることになった。貴族の客をお泊めすると言うので、村長までが挨拶にくる騒ぎになった。 シエスタの家族を紹介されたのだが…何故か、シエスタの弟達から『プロシュート兄ィ』と呼ばれるハメになった。 ペッシやデルフリンガーから兄貴と呼ばれてはいるが、昔、イタリアで暮らしていた時の家族構成では一番下だったりする。 弟分の面倒を見る事は慣れているが、本物の弟の扱いには慣れていないので 正直言うと撤退決め込みたかったのだが、ベイビィ・フェイスの負い目があるので、とりあえず相手した。 だが、相手をしている姿を他3人に思いっきり見られている事に気付いた時には、天井にブチャラティが居た時の気分になった。 「……なに、全員でこっち見てやがる」 「…い、いや、凄く馴染んでるなーと思って」 「その、たまに見せる意外さがたまんないのよね」 「長兄」 一瞬、全員老化させて忘れさそうかと思ったが、さすがに久しぶりに家族に囲まれ幸せそうなシエスタを見て空気を読んだ。 (オレも結構丸くなったもんだな…) そう思うが、ルイズが聞いたら 「まだ十分すぎるぐらい尖ってるわよ」 と言われる事間違い無しなのだが。 適当に相手し終えると、外に出てシエスタが話していた草原へと向かった。 まぁ特に何もする事が無かったし、身の振り方も考えて起きたかったからだ。 夕日が差す草原の中、一人腕を頭の下に組みそこに寝転ぶ。 「しかし、日食か…自然現象頼りってのが痛し痒しってとこだな」 地球でも十年単位でしか見る事のできない現象なのが辛いところだった。 まして、天文学なぞが存在するかどうかすら怪しいここでは、次に日食が起こる時期すら分かったものではない。 星間連動の結果起こる現象なので、どう足掻こうとそれが変わるものではないため、半分は諦めかけていたが、すぐにそれを否定した。 「どうにも、この事になると違和感があるな…」 その原因が分からないのがイラつくとこだ。 「ここにいたんですか。お食事の用意ができましたよ。弟達もプロシュート兄ぃと一緒に食べたいと言ってます」 クスクスと笑いながら後ろからシエスタが声を掛けられるが その服装は、いつものメイド服と違う、茶色のスカートに、木の靴、そして草色の木綿のシャツという格好だった。 「懐かれるようなガラじゃあないとい思うんだがな…」 まぁ職業暗殺者であるからしてそうなのだろうが、どうもルイズ達の影響を受けて雰囲気というか滲み出る気配の質が変わったらしい。 イタリアに居た時なら多分泣かれてもおかしくはないのだが こっちに来てから、殺した事はあれど状況で殺ったという事だ。仕事として暗殺をした事はない。 そのせいなのだろうとは思うが、あまり納得したくないのが本音だ。 「そんな事ないですよ?わたしも、色々と助けてもらってますし」 一瞬だが保夫やってる姿を想像して頭痛がした。どう見てもそんなキャラはしていない。 そんなのはペッシあたりが適任だと本気でそう思った。 「この草原、とっても綺麗でしょう?わたしも一緒に横になっていいですか?」 無言で、肯定しながら沈みかけている夕日を見る。 しばらく、無言の時間が続いたが、少しばかり言いにくそうにシエスタが口を開いた。 「……もし日食が起こったら…やっぱり元の世界に帰っちゃうんですか?」 「帰れるかどうかは分からねぇが試す価値はある」 「…誰か待ってる人でもいるんですか?」 少し考えたが、ルイズにも話している事だと思い話す事にした。 「生き残った仲間が居るが…こっちに来てから大分時間が経ってるからな… 全員くたばってるか、生き抜いて栄光を掴んでるかのどっちかだろうが…栄光を掴んでいたとしても、そこにオレが入る資格は無いな」 「それなら、帰らずにこの世界に居ても… 父も、ひいおじいちゃんの国を知っている人と出会ったのも何かの運命だろうから、よければこの村に、その…住んでくれないかって」 シエスタがそういい終えると、プロシュートが寝ている周りの草が音をたて枯れ始めた。 「結果がどうあれ、それを最後まで見届けないってのはオレ自身の心が『納得』できねぇんだよ。 万が一、あいつらが全滅してた時は、敵討ちって殊勝なもんでもないが…チームの最後の一人として報いを受けさせる必要がある」 周りの草が枯れている様子を見て、唖然としているシエスタに構わずさらに話を続ける。 「それに、こいつは周りの生物を無差別に老化させ朽ち果てさせる力だ。本来ならオレの周りに人が居ていいはずがねーんだよ」 氷という抜け道はあるが、無差別である事は変わり無い。パッショーネに入団し暗殺チームに属していなければ未だ一人だったろうと思う。 草を枯れさせる中、これで、シエスタが逃げるなりしてくれればいいと思い、周りを老化させているのだが…手をシエスタに握られた時は、さすがに焦った。 広域老化ではないが直で枯れさせている。直はグレイトフルデッドの手で触ったものが瞬時に老化させられる。 つまり、本体であるプロシュートの手を掴めば、少なからずその影響は出る。 「何やってんだオメーはッ!」 老化を解除するが、人間なら僅か数秒で寿命一歩手前まで追い込む直触りだ。 解除すれば姿は元に戻るとはいえ、髪や歯などの戻らないものも当然ある。 「………ふぅ…周りに人が居ないなんてことないじゃないですか」 「…無茶しやがる…髪や歯が抜けるだけならまだマシな方だが…下手すりゃあ死んでんだぞ」 元に戻ったシエスタを一瞥するが、髪や歯が抜け落ちた様子は無い。 老化させた事はもう数え切れないが、老化中に氷も持たず直に自ら飛び込んできたヤツは初めてだ。 その行動に今度はプロシュートが唖然とする番だったが、そこをシエスタに小突かれる事になった。 「……ッ」 「プロシュートさんはもっと『自信』を持ってください! わたしを二回も助けてくれたじゃないですか…人を助ける事ができる力を持った人の側に誰も居ないって事なんて無いんですから」 その言葉にまた、沈黙が続いたが、今度はプロシュートがそれを破った。 「クク…ハハハハハハハハ!」 笑った。パッショーネに入団してからは無かったが、ここに来て久しぶりに本気で笑った。 チームのヤツらと居るときも笑った事はあるが、ここまでは無い。 まして、ハルケギニアに来てからは薄く表情に出した程度だ。『魅惑の妖精亭』のアレは営業スマイルなので数に含まれてはいない。 シエスタもシエスタで面食らっている。今までの行動からして、まさか笑われるとは思っていなかったからだ。 「その…す、すいません…わたし、何か拙い事を言ってしまったんじゃ…」 「ハハ…いや…まさかオメーに『自信を持て』なんっつー事を言われるたぁ思わなかったからな」 ペッシにもルイズにも言った言葉が、自分に向けて。しかも、最も戦いと掛け離れたシエスタに言われるとは思いもしていなかった。 一頻り笑った後、笑った姿を見て、心なしか少しだけ明るくなった声でシエスタが答えた。 「もし…もしですよ?日食の中に入っても戻れなかったり イタリアって所に戻って『納得』する事ができれば、この世界に戻ってきてくれますか?わたし、何もできないけど待つことぐらいはできますから」 「日食で戻れなかったとしても、戻る事を諦めるわけはねぇし、戻ったらこっちに来る方法が無いからな。そいつはオレよりルイズに言ってくれ」 「それでも、待ってますから」 「アテが無いのに待たれても困るんだが…まぁそいつはオメーの自由だ。好きにしろ」 「そう言えば、さっき学院から伝書フクロウが届いて、サボりまくったものだから 先生方はカンカンだそうですよ?ミス・ヴァリエールやミス・ツェルプストーは顔を真っ青にしてました」 「タバサの鉄仮面っぷりはリゾットといい勝負だな…一度会わせてみたいもんだが…日食が起こったらあいつを連れて行くか」 「そそ、それなら、わ、わたしを連れて行って、く、ください!」 「…本気にするとは思わなかったが、冗談だ。他の世界のヤツを連れてく程、堕ちちゃあいねぇよ」 「え、あ…そうですよね!冗談ですよね、驚かせないでください。わたしの事も書いてあって 学院に戻らず、そのまま休暇をとっていいですって。そろそろ、姫様の結婚式ですから。だから、休暇が終わるまで、私はここに居ます」 「アレはオメーの家のもんだからな。ガソリンをどうにかしたら、飛んできてやるよ」 「『ゼロ』でしたっけ、その時はわたしも乗せてくださいね」 「そいつに関しては…まぁ一応約束はしといてやる」 シエスタは先に戻ったがプロシュートはまだ残った。 「……3秒やるから出て来い」 そう言うと、草原からルイズが顔を出した。 「…いつから気付いてたのよ」 「そりゃあ、最初からだ」 うぐ、と言葉が詰まり何も言えなくなる。 最初からというと、プロシュートとシエスタが草原に横になっているのを見つけた時からという事だ。 「……それじゃあ…なんで、今まで何も言わなかったのよ」 「用があるなら出てくると思ってたが、出てこなかったんでな。それで放っといても出てこねぇから呼んだってわけだ」 「気付いてるなら、言いなさいよ…わたし一人バカみたいじゃない…」 「しょお~~がねぇだろ、オレはリゾットみてーに洞察力が高いわけじゃあねぇんだからな」 また、『リゾット』という名前が出て、前々から名前だけは聞いていただけに、プロシュートの仲間がどういう人達なのか聞きたくなった。 「ねぇ…前から言ってるあんたの仲間の事教えなさいよ。べ、別に深い意味は無いわよ!ちょっと気になっただけなんだから」 「ま…どうせ、あいつらはこれねぇからな。そうだなまずは……」 出来てるんじゃあないかともっぱらの噂のソルベとジェラード。 『しょぉおお~~~がねぇ~~~なぁ~~~』が口癖でスタンドの使い方を最も良く知っているホルマジオ。 鏡の中に入る事ができ、能力的にはほぼ無敵を誇るイルーゾォ。 自分の弟分で、スタンドは強力だが、まだまだ精神的にマンモーニなペッシ。 趣味は変態的だが、情報処理と追跡能力に関しては皆に頼られていたメローネ。 キレやすく手に負えない事が多いが、その実、仲間のために真っ先に動こうとしたギアッチョ。 そして、自らが最も信頼し、クセのありすぎるチームを纏め、タバサの如く表情を崩さないリゾット。 全員の事を話すと、黙って聞いていたルイズが話し始めた。 「…それで、やっぱり日食が起こったら…帰るの…?」 「そりゃあな。聞いてたとは思うが、試すだけの価値はある」 「…帰って何があるのよ…!仲間が生きてたら、姿を消すんでしょ!? 全員…死んでるなら、一人で組織ってのに戦いを挑むんでしょ!?死んじゃうかもしれないのに…何でよ…!」 半泣きでルイズが喚きたてる。 「諦めが悪いんだよ…オレはな。つーか何でオメーが泣く必要があんだ」 「あ、あんたはわたしの使い魔なんだから、心配するのは当然じゃない…!」 「少なくとも日食が来るまでは居てやっから泣くな。このマンモーニが」 「…マンモーニって言わないって約束したじゃない。なにもうあっさり破ってるのよ、馬鹿ハム」 「ウルセー、マンモーニにマンモーニと言って何が悪い」 「ま、また…!馬鹿ハム!」 「ハッ…!マンモーニのルイズが」 「馬鹿ハム!」 「マンモーニが」 「この…ば……ばばば馬鹿ハムーーーー!躾けてやるーーーーー!!」 「やれるもんならやってみやがれ」 「うるさーーーーーい!ファイトクラブだッ!!」 そう叫んだルイズが鞭を取り出し振り回すが、それを全て避ける。 「よ、避けるなぁーーーーーー!!」 「避けないでどうする。オメーはサボった事でも心配してろ」 その様子を少し離れた場所から、キュルケとタバサが見ていた。 キュルケが何か微笑ましいものでも見るかのような笑みを浮かべながら 「やっぱり、あの二人って、兄妹みたいよね。目的は達成できなかったけど…あたしの入る余地はまだ十分って事よ」 タバサはキュルケを見て、少し考えたが聞こえない程度の小さい声で 「七転八起」 と呟いた。 プロシュート兄ィ ― ヤバイ『アニメルート』へIN! 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起き上がった男から名前を聞き出そうとルイズがため息混じり男に問う 「はぁ・・・何で平民なんか・・・あんた名前は?」 「・・・・・ザ・グレイトフル・デッドッ!!」 「ザ・グレイトフル・デッド?・・・変な名前」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ だが、プロシュートがその名を叫んだ瞬間周辺の空気が変わる。 しかし、今の時点でその微妙な違いに気付くものはいない。 「ふぅ~ん、これがゼロの使い魔か」 「平民の割りに妙な格好してるな」 と、プロシュートを近くに見に生徒が数人こっちにやってきた。 「ちょっと俺にもよく見せてくれよォ~~~」 「あ?こんな近くで見えないってお前何時から近眼になったんだ?」 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 「だからさぁぁぁぁよく見えないんだよぉぉぉぉ目がかすんでよく見えないんだよぉぉぉぉぉぉ」 「ひ、ひぃぃぃ、一体どうなって・・・・」 「俺の髪がぁぁぁぁぁぁどんどん抜けていくよぉぉぉぉぉぉ」 「こ・・・これは皆・・・・『と・・・年をとっている!!』」 この場で唯一老化していないルイズがコルベールの方へ振り向く。 しかし、その瞳に映ったものは枯れ木のように朽ち果てていく教師の姿ッ! (まさか・・・まさかこれはあの男がやってる事なの!?) まだ比較的老化が進んでいない生徒達が半狂乱になりながら召喚したばかりの使い魔に命ずるッ! 「あ・・・あの平民を攻撃しろぉぉぉぉサラマンダーーーーー!!」 だが、その召喚したての使い魔は動かない。 いや、動きたくても動けない。 何故ならサラマンダーもスデに老化しきって死に掛けの状態だったからだッ! 彼らがグレイトフル・デッドの高い熱を持つ生物程老化が早いという 性質を知っていればサラマンダーをけしかける事も無かっただろうが彼らにはそれを知る由もない。 そして、サラマンダーという高熱を持つ生き物を呼び寄せた事によりその周辺の老化速度が一層早くなるッ! 「おおごおおおおおおおっ」 その阿鼻叫喚とも言える状況をプロシュートは『養豚場の豚』を見るかのような冷静な目で見ている。 だが、すぐさまその状況における異変を見つける。 (何だ・・・?あの女、何故オレのグレイトフル・デッドの能力下にありながら老化しやがらねぇ!?) 男女の違いで体温の上昇差を区別し老化の速度に違いが出るグレイトフル・デッドとはいえ全く老化がないというのはプロシュートにとってはありえない事だった。 (氷を持ってるわけでもねぇ・・・・それに、この快晴で氷一つ持ってたとこで老化が止まるはずがねぇ!) ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 明確な殺意を持ちプロシュートがルイズに近付いていった。 戻る< 目次 続く